敗戦記、反省記

  香里農園としてインターネット販売を始めたのとほぼ同時(2000年)に、ひょんなことから知り合った仲間たちとポケット市も始めました。インターネット販売は、HPを立ち上げてから半年で初めてお客さんがつきましたので、ポケット市の方が《原点》ということになります。ここでいろいろなことを学ばせていただき、仲間もできました。が、ど素人集団の悲しさ。力至らず1年半も持ちませんでした。現在はもちろん営業していないのですが、香里農園のルーツということで営業当時のまま載せ、最後に素直に敗北を認め、敗戦記・反省記を載せました。初めの意気込みから落胆まで、有機・無農薬への道がいかに大変か、少しでもご理解いただければと思います。

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 人間は食べ物からエネルギーをもらって生きています。 
だから、食べ物には「生命エネルギー」がなければなりません。
食べ物を「見栄え」や「大きさ」だけで選んでいませんか?

 農薬・化学肥料など化学物質を使わない、有機・無農薬農産物が理想でしょう。
しかし、有機・無農薬は口で言うほど簡単ではありません。
苦労して作っても市場では評価されず,あきらめていく農家も多いのです。
 有機・無農薬でがんばっている人達に「売る場」を提供したい。
 お客様に「安全」で「健康」な農作物を提供したい。

 …そんな思いで有機・無農薬農法のグループを中心に「ポケット市」を開くことにしました。
野菜,自然卵,カンキツなどの果物,梅…を直販しますが,
自由に持ち寄るため,品揃えはできません。
お気軽に見に来て下さい。

 QOL(クオリティー・オブ・ライフ)は、「生活の質・生命の質」を高めるという意味です。
わかりやすく言えば,「自分の健康は自分で守り,人間として生きがいを持って心身ともに健康な生活を送る」ということになるでしょうか。
 私達はこのQOLをテーマとし,無農薬・減農薬でがんばっている方に限らず,
「生活の質を高める」運動をされている方の参加を希望しています。
ただし、供給が多くなりすぎる場合,お断りすることがあります。
 お客様もこの趣旨をご理解いただき,「ポケット市」を育てて下さい。
「安全で,おいしくて,きれいで,大きくて,格安で」と言われる方もいますが、
そんな「わがまま」は言わないようにお願いします。

お店の紹介


 家主の伯母さん(祖父の妹)のご好意で私の塾の1階を使わせて頂いています。
有機・無農薬農産物を,できるだけ安く提供することにすると,経営は苦しくなります。
特にはじめはまともに「家賃」は払えないので悩んでいました。
しかし、「ええことやからやってみたら。やってみなわからんやろ。」
…伯母さんの一言に甘えることにしました。
軌道に乗るまで「できる範囲で払う」という条件です。
「人を頼りにするのはいけないが,人間は人の協力なしには生きていけない」のも確かです。
 写真は開店2時間後。戦争状態が終わり,お客様も商品も少なくなっています。
中でも販売していますが、写真では見にくいですね。
 春は野菜がすぐに「トウ立ち」し,思うように品揃えができませんでしたが,
まもなくキュウリ,ナス,トマト,カボチャ,スイカ,えんどう豆などが出てくるはずです。
 「バカ安」のものもあったため,品物が出た割には売上が少なかった点、問題でした。
商売は消費者,生産者ともに「利益」がなければ意味がありません。
一方の犠牲によるものは本物ではなく,長続きしません。
適正価格でどれだけ来ていただけるか,今後の課題です。
 看板などは全て「手作り」で済ませています。
「下手な看板やな」と注目されれば良いと思っています。

 場所を説明します。地図が下手で申し訳ありません。
田辺市周辺の方だけでなく,田辺・白浜方面に来られた方にもぜひお立ちより頂きたいと思います。
#田辺駅から大通りに出て,2つ目の信号を左折。
#つぶり坂を下り,闘鶏神社の馬場から20m。
#白浜からは,42号バイパスに入らず,田辺市街のほうに進み,オークワから市内に下ります。
 「香里塾」という看板が上にあり,下には「QOLポケット市」の立て看板があります。

 当分の間,月:午前10時〜午後1時、そのあと午後5時まで無人販売
        木:午前10時〜午後5時、無人販売のみ

メンバー紹介

 左から,
中崎夫妻(旬采屋),久保さん,私(初山,香里農園)。
私の家内は写真を撮っているので写っていません。
垣矢さんという方も,ミカン取りなどで忙しく,写っていません。

 中崎夫妻は南部川村でこだわりの農業をされ,米,もち米,野菜,梅などを生産するとともに,
梅干,モチ,切干大根などの加工,炭焼きにも力を入れています。
ご主人は昔,加藤茶,志村けんと「ひげダンス」をしていました。(ウソです)
彼らとは「花市」のマーケットでも農薬野菜を出品していて知り合いました。
素朴で実直なお人柄に引かれました。
私同様,「十分りっぱな変人」と言えるでしょう。
「類は友を呼ぶ」というか,波長が合います。
「同類相憐れむ」にならないようにしたいと思います。
 久保さんは農家ではないのですが,無農薬に目覚めてからご夫婦で畑を借りて
野菜を作っておられます。私の自然卵のお客様だったのですが,仲間に入ってもらいました。
「福祉」という名のもとに甘え,わがままを言っている老人も多い中,
ご夫婦で畑を2枚借りてがんばっておられます。
 がんばっているお年寄りに生きがいを与えることが本当の「福祉」だと思うのです。
いくつになっても,「人のお役に立っている」という、「存在意義」が必要ではないでしょうか。
 もう一人,垣矢さんという、80歳近い大滝秀治そっくりさんがいます。
私の父と同級生で,息子は私と同級生です。
柑橘を中心にがんばっており,私のところで足りないものを分けていただいています。
ここのミカンは低農薬で,おいしいと評判です。
息子さんにパソコンを設定してもらい,メールやホームページを見て楽しんでおられ,
「新しい」面も持っています。いつか写真を載せたいと思います。
 は柑橘,梅,自然卵,野菜を生産しています。
一応「代表」ということになっていますが、早い話,会場設定,広報,呼びかけなどの雑用係です。
「自分の仕事に追われているのに,人の世話までしてアホや」との声も聞かれました。
が、「誰も動かなければ自分が動こう」と思ってここまでこぎつけました。
自己満足に過ぎないかもしれませんが,「いいじゃないの幸せならば」です。
 他にも「仲間」がいるのですが,同じ商品では「共倒れ」になって,かえってご迷惑になるので,
お得意様が増えてからご協力頂こうと思っています。

ポケット日記

2000.4.3 ポケット市開店
 新聞広告も出したが,今までの「お得意様」がお客様を連れてきてくれた。ありがたいことだと思う。
初日なので,かなり安くしていたが,「安すぎる」ものもあり,今後の値段設定が難しくなると反省。
「チューリップ8〜12本植え300円」,「イチゴ6本植え700円」,「八朔C10キロ袋400円」,「三宝B10キロ袋800円」,「野菜100円」,「ポンカン10個100円」などが飛ぶように売れた。
「ミカンがおいしかったから」,「チューリップがお買い得だったから」…と,もう一度買いに来られる方や、地方発送を注文される方もいました。
自然卵や柑橘などの「お得意様」が声をかけてくださったおかげと感謝しています。
 
2000.4.6 招かれざる客
 どんな商売にも「招かれざる客」はつきもの。
いいお客様に恵まれて,気持ち良く「営業」をしていたところ,来ました,来ました,「招かれざる客」が。
「アレルギーで,農薬のかかったものや,化学肥料をやったものは食べられない。」「今65だが,25年間仕事もできずにいる。」「ほんまに無農薬なのか,保証できるのか,責任は取れるのか。」「お前は共産党か,何かの宗教団体か。」「わしは食い物には金を惜しまず,良いと思ったものにはいくらでも金をつぎ込んだが,無農薬は全部ウソや。」…から始まり,自然食品や健康食品の店の悪口,有機・無農薬農家の悪口をさんざん聞かされ,何とか大学の某教授を知っている(もちろん向こうは知らない)とか、有機・無農薬は農薬をやらない分、楽にできるはずだとか,農薬をミカンの皮にだけかけて実には入らない方法があるとか(そんなことはできない),どこかで仕入れてきた知識をとめどなく披露してくれた。
 結局はサンプルが欲しいと粘り,3種類のミカンをタダで持って行かれました。

2000.4.10 招かれざる客 その2
 月曜日当番の中崎さんに,先日のお客の話をし,無料で渡さないように言っておいた。
私の家に例のお客から電話があり,「この前のミカンはどれも,一口も食べられなかった。」と、前と同じ話を30分繰り返した。「仕事があるので」と電話を切って店に行くと,例の男が来て前の3種類のミカンを取り,更に袋入りのポンカンを1個取り出してよこせと言うので断ったら怒って帰ったとのこと。
 その腹いせにウチに電話をしてきたのだろう。哀れで惨めな男だ。神様も何かの理由で彼をこの世に送ったのだろうが,自分がその「役」でこの世に生まれてこなかったことを幸せに思う。若い者なら諭して立ち直らせることもできるかもしれないが,65歳にもなった男に何を言っても無駄。
 一口も食べられないのなら,店でサンプルを食べた上に3個持って帰り,更に同じものをよこせとは言わないだろう。「もう来ないで欲しい」と追い返すしかない。あるいは放っておくか。
 自分の息子の年齢に近い者や,自分より15才も年上の老人ががんばっているのに、こんな生き方しかできず,誰からも注意されないのは惨めだ。が、それも彼が今までかかってまいた「種」。「刈り取る努力」をしない者に誰が手を差し伸べると言うのか。
 ただ、今後は彼のことは書かないでおきます。「マイナス」の波動を受けるのは賢明ではなく,読む方も不愉快になるでしょうから。

2000.4.17 売上やや落ち込む
 順調に来ていたのですが,今日は売上がやや落ち込みました。野菜が少ないこと,チューリップなどの花が売れてしまったことなどが原因。 いつまでも開店景気が続くわけではなく,これからが正念場と思います。
 昨日は「南部川村」のイベントで中崎さんにミカンと卵を売ってもらい,完売でした。商品には自信があるので,がんばります。

2000.4.24 地元の新聞社取材
 地元の新聞社に知り合いがいて,「ポケット市」のことを話すと,「ぜひ取材に」とのことでした。3週間たって,やっと「取材に来た」と月曜当番の中崎さんから電話があり,急いで店に出向く。私の言いたいことはパンフレットやHPに載っているので,あとはそれを読んでいただくことにした。
 先週の木曜は売上を回復したが,取材中「お客様」が来ず,ややあせる。取材が終わってから数人来店。 「あと10分早く来てくれ。」

2000.5.11 消毒もしていない野菜は食べられない?
 本当にいろいろなお客様がおられます。分かっている人,分かった振りをする人…。今日はほうれん草などをいじくりまわし,「ほんまに無農薬か。私ら消毒もしていないような野菜,よう食べんわ。今スーパーで買うて来たからいらんし。」という60前後の主婦がいた。「消毒」とは「毒を消す」ことだと思っているようです。実際は「毒をまく」ことなのに。「除菌,除菌」というコマーシャルに踊らされているのではないでしょうか。
 「有機・無農薬」の野菜を食べると体内に虫が入り,ガンなどで死ぬことがある,という本を書いた「元東大教授」もいて、ガックリきたこともあります。確かに,食べ物にあまりにも神経質になることは良くないし,消費者の無知を利用して「有機・無農薬」と称する食品を高く売りつける人もなきにしもあらずですが、「できる限り注意して悪いものは避ける」べきでしょう。きちんと作った食べ物はそれなりの「味」がするものです。分かってくれる人だけ分かってくれれば良いとしましょう。

2000.5.13 新聞に紹介記事が載る
 4.23に取材された記事がやっと地方新聞に出ました。下に紹介記事を載せます。
中崎さんの「無耕起・無肥料」の田植えも以前同じ新聞で取り上げられました。私これほど徹底はできませんが,その赤米を少しごはんに入れるととてもおいしかったです。彼の作る玄米モチは「ムネヤケ」しませんでした。「何か」が違うのでしょう。

2000.5.27 オールドギャルの集団万引きなど
 高校生やコギャルの集団万引きはよく耳にするところです。
「全く近頃の子はしつけがなっていない。親も親だ。」と言われます。
ところが今日の集団万引きは何と65〜70歳くらいのおばあさんたちでした。
今日の店番は70歳前後の久保さん。(正確な年は聞いていません。)
お店の裏の入り口から5人で入ってきて,
奥の部屋にまとめておいている卵や野菜をゆびさして「これ何な?」
「注文されたものを置いています。」
そのうち3人が売り場に来て物色。久保さんはそこで応対。
「欲しいもんないわ。」と帰ったあと見ると,
奥の部屋の注文の品のうち10個入り卵3ケースと野菜約1000円分がなくなっている!
5人が「グル」なのか,1人だけが「出来心」で盗んだのか,定かではない。
が,同年代の女性に盗まれて,久保さんは大ショックでした。
これを聞いて張り紙をしました。
いっしょうけんめいにやっているお店です。
 万引きはしないようにお願いします。
 だれも見ていなくても、あなたと神様は見ています。」
 その後,「お札」が効いたのか彼女達は来なくなりました。
心の貧しい人たちだと思って忘れましょう。

 別の50才台の女性はいつも「お金は後で払うから置いといて。」
と言いながら取りに来ず,3,4日後に来て「こんな野菜もう食べられないわね。いらんわ。」
そこでこんな張り紙をしました。
予約は前金でお願いします。予約された方は必ず取りに来てください。」
彼女もこの張り紙を見てから来なくなりました。
この人は「熱しやすくさめやすい」タイプ。かつてある宗教団体の支部長をしていて,
5000万円ほど騙し取られたとのことです。
慈善事業やボランティア活動、環境問題にも熱心といわれる方だけに、
「世の中、偽善者も結構いるのだな」と寂しくなりました。
いつの時代も「今の若い者は」と言われますが,
結局その人間の問題で,年には関係ないのでしょう。
「この世の年齢」と「霊年齢」があるように思います。
この世では年を食っていても,霊的には未熟な場合があるのです。

2000.8.10 野菜の端境期
 8月9月は青菜が少なく、苦戦する。
7月のバレンシャオレンジからあとはミカン類もなく、売上は「グン」と落ちる。
そもそも野菜は手間がかかる割に収入が少なく、その日に売れなければニワトリのえさにするしかない。
もっとも、無農薬野菜の価値がわからない人に食べてもらうよりも、
ニワトリたちに食べてもらうほうが気分はいい。
 夏の青菜は作りにくく、比較的作りやすいモロヘイヤや不断菜はなじみがなく買ってくれない。
野菜は人間の健康にとって不可欠なものなのに評価は低く、
これでは良い野菜を作る農家はなくなってしまうかもしれない。
悲しい世の中だと思う。

2000.12.20 料理のできない主婦
 30歳台の女性、いつも主に卵を買ってくれていたが、
「私は忙しいから今度キャベツ・白菜・ホウレンソウ・ネギ・ワケギ・大根、他に適当にみつくろって持ってきて」
次の日、畑からとりたてを洗って持っていくと、
「こんなん頼んだ覚えない。これもいらん、これもいらん。」で、結局200円分だけ置いて帰ってきた。
背が低いとはいえ、「大人」。2時間ほどかかって収穫・配達して200円とは。
この人は「焼く」か「いためる」料理しかできないそうで、野菜はほとんど使えない。
料理法を説明しても「できない」という。挙句の果てに、虫の居所が悪かったのか、
「こんな商売していたらお客さんは来ないよ。二度とあんたのところで買えへん。卵ももういらん。
店も塾もつぶれたらええんや。」などと悪態をついて、実際二度と来なくなった。
こんな人を相手にケンカをしてもこちらが不利になるだけだから、黙っていた。
中高生やそのお母さんを相手に商売している人とケンかをすると、
塾の妨害までしてくるのです。
 最近はスーパーなどで「お惣菜」を買ってきてその容器のまま食卓に出す「主婦」が多いと聞く。
自分や家族が食べるものくらい自分で作れよ!
まな板もないし、包丁も使えない「高学歴の主婦」もいる。
「点数を取っただけの馬鹿」、「学歴だけの馬鹿」は、「何もできない馬鹿」より始末が悪いかもしれない。
「何で女が料理せなアカンの」という若い女性が多くなってきた。
女性は家庭において精神的・肉体的健康を守る重要な役割を持っている。
それが「封建的」とか「男女差別」だとかいきまいている「進歩的な女性」を見るとあわれに思う。
 私も「余計なお世話」を言う年寄りになってしまったのか。

2001.3.10 無人販売と窃盗
 12月から週14時間中11時間を無人販売にしている。
はじめはお金の計算が合っていたが、だんだん合わなくなり、2割程度万引きされていることが分かった。
ほとんどが100円で、50円単位で売っているにもかかわらず、1円玉や5円玉も多い。
「代金入れ」は「さいせん箱」じゃあないんだから。
 外国では無人販売でごまかすのは「常識」だろうが、日本では正直にお金を入れるのが、今でも「常識」だと思う。
若い連中ではなく、「いまどきの若いもんは」といっている立派な大人たちの仕業だと思うと情けない。
 田舎のほうで道路のそばに「無人販売所」があるのをよく見かける。
聞くところによると農作物だけでなく、代金入れのお金までゴッソリ持って行かれるそうだ。
年寄りたちの苦労と楽しみを奪う連中は許せない。
 私たちのポケット市では近くの人たちしか来ないので、そんなことをしていると思うと人間不信になる。
8割はきちんとお金を払ってくれているのだし、無人販売という「手抜き」をしているわけだから、
「それで良し」としなければならないのかもしれない。
 先日も80才くらいの女性が、「兄ちゃん、今若い男がミカン2袋持って逃げたで。」
見ると100円のミカンの袋を2つ持って、60才くらいの男性が全力疾走し、
赤信号で肩で息をしながら止まっている。
あわれだ。

2001.8.6 恐怖の一枚歯
 「招かれざる客」の話はもうしないと言ったが、
その後も「イヤガラセ」は続いている。
不愉快な話はもう本当にこれで終わりにしたいと思います。
 最近ではひげそりでさえ2枚歯3枚歯が主流なのに、
この男は前歯1本しかなく、65歳なのに80歳くらいに見えて、
やせた長身を折り曲げてぼそぼそしゃべり、
不気味でしつこいので、我々は「恐怖の1本歯」といって恐れている。
店に来る、電話が来る、家にまで押しかけて来る。「帰ってくれ」といっても帰らない。
いつも話は同じ。有機・無農薬農法のありえない、実行できない話、学歴や宗教の話、
医者を目指していたことや大学教授を知っているなどの自慢話、
私どもの店から「買った」野菜を食べると呼吸困難の発作を起こすなど。
しかし、店番がいるときに買ってくれたことはなく、
お客さんに不愉快な話をするだけなので、
無人のときに「万引き」しているのだと確信している。
忙しいとき、特に親父が死んだときや梅取りの時には家に来てしつこく粘る姿に
「こいつは地獄霊か」と思ったものでした。
 強度のアレルギーだというが、
コップ一杯まで水が入っていて、あと一滴でも水をたらすと水がこぼれるような状態になっているのだろう。
我々はコップ一杯になるまで体質が悪くならないような野菜を作ろうとしているのであって、
どうしようもなくなった人で、しかもイヤガラセが趣味の人間まで救うつもりはない。
「野菜は無農薬、果物は最低限の低農薬で作っていますが、
よその畑から飛んでくる農薬を防ぐことはできませんし、水や空気の汚染は避けることができません。
したがって無農薬という表示は低農薬に変えます。
また、強度のアレルギーまで保証するものではありません。
体質に合わない方はお買い求めにならないでください。」
といつも彼にお話していることを張り紙にすると、怒って電話をしてきた。
「あれはワシのことか。」「そうです。」
次の日、無人のときに私が隠れて見ていると、
完熟トマトの袋に手を突っ込み一つ一ついじくりまわしている。
この日は「万引き」はしなかったが、あとで見るとほとんどが「グチャグチャ」の状態だった。
以前、保健所に相談したときは、この男には手を焼いているとのことだった。
方々のポケット市で迷惑をかけている「有名人」だという。
みんなで詰め寄って追い返したそうだ。
警察にも相談したが、その程度なら「犯罪」にはならないという。
私も法律は少しかじっているので、それは理解できる。
だからこそ「相談」しているのだ。
百戦錬磨の彼だから、どこまでなら犯罪にならないか熟知しているのだろう。
 「あなたの行為は監視されています。警察にも連絡しています。
どうかもう来ないでください。」の張り紙でしばらくは来なくなった。
後日、久保さんあてにお手紙が投げ込まれていた。
いわく、「先週買ったキュウリ、減農薬どころではなく、返品します。
すごく農薬入っています。これは飛んできた農薬などではないと思う。
もっと良心を持ちなさい。」
久保さんは絶対に農薬を使わない人なので、かなりショックを受けていた。
 私はここ半年ほど野菜は出していない。
こんな男のためにかき回される自分が情けないが、
たいした売上げもなく、努力が報われることもなく野菜を出すことに嫌気がさして来ている。
野菜はすべて「ふるさと宅配便」にまわしている。
「ふるさと」では高く評価されているのに、この大きなギャップは何なんだ。
商売をしているともっと厄介な人間にカラマレルこともあるという。
それがないだけ幸せなのかもしれない。
が、「ボロイ」商売ならいざ知らず、こんな小さな店でボランティアみたいなことをしていて
不愉快な思いはしたくない、と思うのは「わがまま」なのだろうか。
 ポケット市を続けるかどうかも含めて、考え直さなければならない時期にきている。

2001.9.26 自分自身の反省
 日記を見るといやなお客の話が多い。
そんなお客だけでなく、いいお客もいることをすっかり忘れていた。
いやなお客に振り回されて、心が硬くなっている。
顔の表情にも表れているかもしれない。
世の中、2割はいい人がいるはずだ。
幸いにしていやなお客は来なくなった。
これからが「本番」なのではないか。
気を取り直して自分の野菜も出してみることにしよう。
お客が減っているが、いいお客の「口コミ」で増えるかもしれない。
あと半年くらいはがんばってみよう。
それにしても、無農薬を求めている人がこれほど少ないとは。
苦労して無農薬で作り、収穫して、洗って、束ねて、…ほとんど「売れ残り」だ。
「いつも同じものばかりだ」という人に変わった野菜をすすめても、
「食べたことないものはいらん。」
スーパーより安いから買うというのが多いようだ。
スーパーの品物と違い歴然なのに。
テレビで小松菜がいい、ショウガがいい、と言われたときだけ売れ行きが良い。
次の年には知らぬ顔。これが世間。
 ミカンにしても、インターネットでは好評なのに、
田辺では「ミカンなら一杯もらっている。」と言われる。
田辺は産地だから「タダ」でもらうことが多いようだ。
山に捨てたものを拾いに来る主婦もいる。
「処分価格」の安いものなら買おう、ということか。
 またグチになってしまった。
半年がんばって、だめならいさぎよく撤退するか。
無農薬は「喜んでくれる」お客様がいないと成り立たない。

紹介記事

 4月23日に地元新聞「紀伊民報」取材。5月23日に掲載された。
写真は左が私,右が中崎さん。


 

敗戦記・反省記

 2001.9.26現在、ポケット市を開始してから1年半経過しました。
このページを楽しみにされている方から「最近更新がなく寂しい。どうなっているのか。」とのお問い合わせもありました。
「便りのないのは良い便り」といいますが、残念ながらお客様も商品も減り、更新する元気もなくなったのが実情です。
 会社をやめて塾や農業を始めたのは、「人間を知れ」という神からの導きと考えてきましたので、
率直に失敗の原因を分析するとともに、今後の方針も考えてみる必要があると思います。
 「敗戦」を「終戦」とごまかすことなく、「敗戦記」としました。

≪失敗の原因≫

1.場所の設定をまちがえた
 車の通りは多いが、歩行者はあまりなく、また駐車場がない。駐車場を確保する経済的余裕もない。
2.時間帯が中途半端だった
 当初週2回、午後1時から4時まで開いていたが、買い物は午前中か夕方が多いので、午前10時から午後1時までに変更し、それから5時までは無人とした。
 午後4時からは塾の仕事があるので、夕方は無理だった。また、週2回店番をするのは時間的に余裕がなかったので、週1回は完全に無人とした。
 7時ごろまで販売してほしいとの希望があったが、時間的な余裕のほか、万引きの多発のため踏み切れなかった。
3.品揃えができなかった
  有機・無農薬で農作物を作っている方に呼びかけて品数を増やそうとしたが、そんな人は思ったより少なく、良心的な価格で売ってくれる方はさらになかった。
 仲間3人のうち一人は遠くから運んでいるにもかかわらず、それに見合う収入がないためと、お客様の質が良くなかったためか、2ヶ月でやめてしまい、仲間の補充ができなかった。私自身も「ポケット日記」に書いているように、嫌がらせなどのため、出品する意欲を失ってしまった。
4.対象となるお客様の層が薄かった
  有機・無農薬を理解してくれるお客様は限られてくる。インターネットなら1億人あまりが相手なので順調にお客様も増えてきたが、田辺という小さな町の近所の人だけではあまりにも層が薄かった。
 商売をすればいろいろなお客様がくることは分かっていた。しかし、私の「度量の狭さ」もあってがまんできないお客様が多かった。一般の商売人の方なら「何でもない」ことでも、素人でボランティア的にやっているつもりの私には我慢の限界を超えた。
 万引き(特に無人のときは3割程度)、 いやがらせ、わがまま勝手にはほとほと愛想がつきた。

≪今後の方針≫

 私一人ならいつでもやめることができたし、とっくにやめていた。でも、久保さんというパートナーがおり、私からお誘いしたのだからそうも行かない。久保さんの野菜は「ふるさと宅配便」にも使わせていただいているが、それ以外に無農薬農産物の売り先はない。
 選択肢としては、2つある。
 1.店をやめて今のお得意様は「宅配」にする。…一番のお得意様はそれで結構ですとのことだった。
 2.品揃えをし、もうしばらく様子を見る。…石の上にも3年という言葉もある。が、「撤退する勇気」も大切だ。

 ふと、今までお客様の悪い面ばかり見て、それに振り回されている自分に気が付いた。自分の欠点や落ち度もあるのではないか。良いお客様もいるのに、好ましくないお客様にばかり気が行って、知らず知らずのうちに快適に買い物ができる環境をこわしていたのではないか。人は変えられないが自分は変えられる。幸いにして好ましくないお客様はいなくなった。今の良いお客様から「口コミ」で輪を広げていけばよいではないか。そこで「2」を選択した。
 「ふるさと」のように、良いお客様に恵まれれば意欲も湧いてくる。これからは良いお客様にだけ目を向けて、彼女たちが喜ぶように持っていけばよい。私は22:78の法則(パレトーの法則とも言う)をよく使ってきた。これによれば、上位22パーセントに78パーセントの価値がある。下位78パーセントには22パーセントの価値しかない。「分かっている人:分からない人」、「良い人:良くない人」、などはすべて「22:78」になっている。インターネット販売は、22:78の法則により、自分にとって好ましいお客様、つまり、有機・無農薬を理解し、そのためにお金を出してくれ、性格の良い人は2割の2割の2割、結局0.8%と考えて始めたものである。日本の人口からすると100万人、約25万世帯ということになる。そのうち200世帯から300世帯のお客様なら集めることができるはずである。実際、インターネットのお客様は増えつづけている。
 ポケット市の守備範囲は500世帯程度、それならお得意様は4世帯ということになり、実際にそのくらいになっている。客層の少ないポケット市ではインターネットと同じ感覚では商売にならない。人間を大きく、度量を広くしなければならない。これからは好ましくないお客様も「味方」に取り込んでいこう。そのためにはまず私の出品を増やすことだ。作物を作りすぎても、「ふるさと宅配便」のお客様が増えれば何とか処理できる。ゆくゆくはインターネットと宅配だけにすることとし、それまではポケット市で現実のお客様を観察・勉強して行こう。赤字は授業料だ。
 場所や時間帯は変えられないから、それでもお客様にきてもらえるだけのサービスや魅力つくりをする。万引きは「人件費」と考えよう。心も含めて「貧しい人」には多少のことはがまんしよう。

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